被相続人の死亡に伴い、相続人が受け取る遺産には、現金だけでなく様々な形態の資産が含まれることがあります。例えば、遺産の大半が不動産で構成され、金銭はわずかしかないというケースも珍しくありません。
このような場合、相続人は不動産を売却して現金化しない限り、相続税を支払うための資金を用意することが困難になる可能性があります。相続人のこうした一時的な資金不足を解消するため、相続税には「延納」という制度があります。
延納の概要
相続税は原則として、決められた期限までに金銭により一括で納付する必要があります。しかし、相続税の納付額が10万円を超え、金銭での納付が難しいと認められる場合には担保を提供し、分納することができます。
この制度を延納といい、所轄の税務署長に申請書を提出し、許可が下りた場合に限り、この制度を利用することができます。
延納の要件
以下の要件を満たす場合、延納の申請をすることができます。
- 金銭での納付が困難な事由があり、かつその納付を困難とする金額の範囲内である
- 納付する相続税額が10万円を超える
- 相続税の申告期限までに申請書を税務署長に提出する
- 延納税額および利子税額に相当する担保の提供
※延納税額が100万円以下かつ延納期間が3年以下の場合、担保提供は不要
延納の担保となる財産
延納の担保となる財産は、以下のものに限られます。
- 国債および地方債
- 社債その他の有価証券(税務署長が確実と認めるもの)
- 土地
- 建物、立木、登記・登録される船舶、飛行機、自動車などで保険に附したもの
- 鉄道財団、工場財団、鉱業財団など
- 税務署長等が確実と認める保証人の保証
延納が認められる期間
延納の期間は、相続財産に占める不動産の割合により異なりますが、原則として5年から20年とされています。
延納における注意点
- 延納するための審査に時間がかかる
- 利子税がかかる
- 延納する額などによって延納の期間と利子税が変動する
相続税の納税には、10か月という限られた期限があります。延納の許可が下りなかった場合には、大きな時間的ロスが生じ、納税が間に合わなくなる恐れがありますので、延納する際には時間的余裕を持ちながら創造九税申告を進めていきましょう。