遺言書のない相続の場合、遺産分割協議を実施して被相続人の財産をどのように分け合うか決めます。
遺産分割協議を行う際は、しっかりと財産調査を行い、被相続人が所有していた財産をすべて明らかにし、相続人全員が財産内容やその価値(評価額)を把握することが大切です。
しかしながら、相続人の一部が財産の開示に応じない、または故意に財産を隠ぺいしているため財産調査が進まないというケースもあります。
財産の内容開示を拒否する理由はさまざまですが、理由の一つに、被相続人の生前に同居していた、または被相続人の財産を管理していた相続人が、財産を勝手に使い込んでしまったというものが挙げられます。残念ながら、使い込まれてしまった財産を全額取り戻すのは難しいのが実情です。もし相続人の一部に以下のような動きがあるときは、慎重な対応が必要かもしれません。
事例1:被相続人と同居していた相続人が、相続する権利を主張し、財産の開示に応じない
被相続人と同居して介護や生活支援を行っていた相続人が、被相続人に貢献していたことから「法定相続分以上の財産を相続する権利がある」と主張し、財産の開示に応じないというケースです。
被相続人の生前から財産の管理を行っていた場合、被相続人の預貯金を簡単に引き出すことができるため、立場を悪用して勝手に使い込んだり、自分自身の財産と混同してしまっていたりする恐れもあります。
事例2:財産は葬儀費用で全部使ってしまったと主張する
葬儀は頻繁にあるものではないので葬儀費用の相場はなかなかわかりにくいものですし、葬儀にいくらかかったのかを聞くのはためらわれるという方も少なくありません。喪主を務めた人に「葬儀費用がかさんで財産をすべて使ってしまった」と言われてしまうと、詮索が難しいと感じることもあるでしょう。
そのようなときは、葬儀屋へ連絡を取り、実際にかかった費用を確認することをおすすめいたします。
事例3:「弁護士に任せてあるから」と、取り合ってもらえない
財産の開示を求めても、弁護士に一任しているため、話し合いには一切応じられないと、取り合ってもらえないケースです。
相続人の一部が正式に弁護士に依頼しているのであれば、その他の相続人に対して「受任通知」が届くはずです。このような通知が届いていない場合には、「弁護士に依頼した」というのは疑わしいでしょう。