被相続人が所有していた自動車を相続した場合、自動車も相続税の課税対象のため、相続税評価額を算出する必要があります。自動車は「一般動産」という位置づけになり、財産評価基本通達129では、原則として売買実例価格、精通者意見価格等を参酌して評価するものとしています。
自動車は買取り相場価格や査定価格をもとに評価するのが一般的ですが、場合によってはその評価方法が難しい場合もあるでしょう。その場合には、評価対象の自動車と同車種、同規格の自動車の小売価格から、償却費を控除して評価する方法があります。
償却費控除の計算方法
一般動産の償却費の計算は定率法を用います。定率法とは、未償却残高に毎年一定の割合を乗じて償却額を計算する方法です。減価償却率は財産の耐用年数ごとに定められていますので、まずは評価対象となる自動車の耐用年数を調べましょう。次に国税庁が公表する「減価償却資産の耐用年数等に関する省令」に記載の減価償却率表から、耐用年数に応じた償却率を確認します。
自動車の法定耐用年数について
評価対象の自動車が新車なのか中古なのか、普通自動車か軽自動車かによって法定耐用年数が異なってきます。
軽自動車の場合
- 新車の耐用年数:4年
- 中古の耐用年数:2年
普通自動車の場合
- 新車の耐用年数:6年
普通自動車が中古の場合、6年経過しているか否かで対応が分かれます。6年経過している場合は耐用年数2年、6年未満の場合は以下の計算式から耐用年数を計算します。
- (新車購入時の耐用年数-経過年数)+経過年数×20%
- 1年未満は切捨て
【例】3年(36か月)経過した普通自動車の場合
- (72か月-36か月)+36か月×20%=43.2か月
43.2か月は約3年半ですが、1年未満は切捨てとなるので、この例での耐用年数は3年です。
以下の減価償却率表から耐用年数に応じた償却率を調べます。
【例】100万円の軽自動車を新車で購入した場合
軽自動車(新車)の耐用年数は4年のため、以下の表より償却率は0.5となり、減価償却費は1,000,000×0.5=500,000円となります。相続税評価額は、自動車の価格から減価償却費を控除したものですので、相続税評価額=1,000,000円-500,000円=500,000円となります。
耐用年数(年) | 平成24年4月1日以後取得 | ||
---|---|---|---|
定率法の償却率 | 改定償却率 | 保障率 | |
2 | 1.000 | – | – |
3 | 0.667 | 1.000 | 0.11089 |
4 | 0.500 | 1.000 | 0.12499 |
5 | 0.400 | 0.500 | 0.10800 |
6 | 0.333 | 0.334 | 0.09911 |
7 | 0.286 | 0.334 | 0.08680 |
8 | 0.250 | 0.334 | 0.07909 |
9 | 0.222 | 0.250 | 0.07126 |
10 | 0.200 | 0.250 | 0.06552 |
11 | 0.182 | 0.200 | 0.05992 |
12 | 0.167 | 0.200 | 0.05566 |
13 | 0.154 | 0.167 | 0.05180 |
14 | 0.143 | 0.167 | 0.04854 |
15 | 0.133 | 0.143 | 0.04565 |
16 | 0.125 | 0.143 | 0.04294 |
17 | 0.118 | 0.125 | 0.04038 |
18 | 0.111 | 0.112 | 0.03884 |
19 | 0.105 | 0.112 | 0.03693 |
20 | 0.100 | 0.112 | 0.03486 |
21 | 0.095 | 0.100 | 0.03335 |
自動車を用いた相続税対策
先程の例のように、100万円の軽自動車を新車で購入した場合、その自動車の相続税評価額は50万円になりました。
自動車を購入せず、100万円を現金のまま相続すると、100万円がそのまま相続税の課税対象となります。このことから、自動車の購入が相続税対策となることがわかります。
また、減価償却率表をみると、耐用年数が短いほど償却率が大きくなることがわかります。つまり新車よりも減価償却費が高くなる中古車を購入した方が、相続税額を抑えることになります。